MY HOUSE / いなべエリア

 

いなべ市北勢町、竜ヶ岳山麓の森に囲まれた集落に一軒のお店があります。
「MY HOUSE」。
大阪から移住した安田佳弘さんが、奥様の真紀さん、息子の凪くんと暮らしながら営む、雑貨カフェです。
雑貨カフェといっても、街にあるお店とは雰囲気が随分異なります。
展示販売される雑貨は、種、石、鹿の角を削ったもの。そして頭骨標本。

 

 

猟師でもある安田さんが、自然から得られる恵みを、自らの体験と視点で編集して人々に伝える場です。
「自然学校」も主催し、森の中から知恵を学び、子供たちの生きる力を育んでいます。

安田さんにその思いをきいてみました。
同じいなべに住み、今回のナビゲーターである金工作家、柴田さんを交えてのお話しです。

 

–––いなべに住み始めたきっかけは?

 

安田さん 「僕自身、いなべ自体にそこまで執着しているわけでもないんですよね。自然に携わる仕事がしたいなと思っていたら、偶然いなべのキャンプ場がスタッフ募集していたから来た、というだけでした」

 

 

 

10年以上前にいなべにきて、キャンプ場で働いていた安田さん。その後、MY HOUSEをオープンさせます。

 

安田さん 「働いていたのは、いわゆる高規格のキャンプ場です。仕事自体にはやり甲斐も楽しさもあったのですが、自分の思い描くアウトドアとオートキャンプとのギャップが年々大きくなってきたんです。5 年経ってここを借りて自分のやりたい暮らしを実践していくうちに、仕事と暮らしとの乖離は大きくなっていくばかりでした。その後子供が生まれたんですけど、キャンプ場がすごく忙しくて土日や夏休み、GW、年末年始はほぼ出勤、家族と関わることができない状況で『自分がやりたい暮らしはこれじゃないな』と思ったんです。
で、キャンプ場スタッフは辞めて、いまのかたちに」

柴田さん 「いなべに思い入れがない、という割にはMY HOUSEさんの影響で移住して来る人が多い気がするんだけど…」

安田さん 「なんでだろうね?(笑) 確かに以前はこういうアンテナショップ的なのもが地域になかったから、田舎に興味を持つ人の窓口的な役割があったのかも。でも今は地域おこし協力隊とかもあるし、そのあたりの役目はもういいでしょって。(笑)
でも実際、いなべの自給的な手作りの暮らしを求めていろんな人がここに来ますね」

『自然に携わる仕事がしたい』『猟師になりたい』みたいな。話を聞くためにいきなり会いに来る人が多いです。でも僕は思うんですよ『うだうだ言ってる前に、自分で行動しなよ』と。今の時代ちょっと調べればいくらでも情報は手に入るし」

 

–––モノづくりに関しては柴田さんも似たようなことを言ってましたね。

 

柴田さん 「確かにいったかも〜(笑) 芸大には立派な設備があるのに、という話ですね。
大学の高価な設備を使ったことがないという学生が『教えてくれる人がいないから使えない』って言うんです。とりあえず使ってみればいいのにと思いました」

 

–––柴田さんと安田さんの出会いはどんなきっかけだったんですか?

 

安田さん 「勤めていたキャンプ場でクラフトマーケットを主催していて、柴田さんがそれに出店してたのが最初ですね。
その時のクラフトマーケットって手芸とか消しゴムはんことかカジュアルなモノばかりだったんですけど、そんな中で何十万ってものを売ってたから『嘘やろ!?」』て思いました。めっちゃ浮いてましたよ。
その時に同い年だってわかって。名刺だけ交換したんです。

柴田さん 「そのあと1年後くらいに、僕がフラッと会いに行ったんですよね、MY HOUSEに。雨の日に鹿をさばいてた」

安田さん 「ちゃんとしたきっかけはそれだね。そこで色々と話をした。
その後、柴田さんの家に遊びに行った時に「これ自分で作ってるんだ」といろんな作品を見せられて、こいつすごいなと。その時に彼がノルウェーで舟を作ってたことも知ったんです。その頃自分はカナディアンカヌーが欲しかったから、更にすごいな、と。(笑)」

 

図鑑の知識はとてもあるけど、街の小学生だったという安田さん。大学ではビオトープやランドスケープなど自然環境の再生や保全を考えるコースで学び、一方で探検部にも所属。子供の頃の想いに大学時代のリアルな活動が重なり、アウトドアに向きあう暮らしへ。
以前から、『次はアラスカに住みたい』とお話しされているので、実際のところをきいてみました。

 

安田さん 「アラスカへの想いは子供の時からあると思います。小学校の頃に動物系のバラエティ番組で荒野とかトナカイの映像見て『行きたい!』」って。だからと言ってその時にアラスカに住もうとかは思ってなかったですけどね。でも子供の頃の原体験って、ずっと残るじゃないですか」

柴田さん 「移住に向けて、何か調べたりはしているの?」

安田さん 「アラスカの日本人コミュニティとやりとりしてるんですけど、アラスカでも猟中心の生活をしようと思うと、難しいんです。居住者であったとしても外国人という括りだから、日本でいう釣り券みたいなハンティングパスが必要なんですよね。それがとても高額。あと外国人はガイドを雇うのも必須で、これまた高い。自分で狩ったものを勝手に売買もできないし、トロフィーにもできない。全部誰かに頼まなきゃいけない。だから外国人のお金持ちが観光で猟をしに行くと同じ感じになってしまう。猟で生きていこうと思うとアメリカ国籍をとるか、アラスカに親族がいなきゃいけない」

柴田さん 「それは、先住民の文化を尊重して、ってことなんですかね?」

安田さん 「向こうに嫁いで猟やるって話はよく聞くんですけどねー。
とりあえず今年の夏1週間くらい知床に行くんですよね。そこでアラスカのことをよく知っている人に会って話を聞こうかと」

柴田さん 「安田さんがアラスカ行っちゃうと、いなべで寄るところが1つなくなって寂しくなっちゃいますね。
でも、友人がアラスカに行っちゃった!っていうワクワク感の方が大きいかな」

安田さん 「まぁでも、今そんなにフットワーク軽くないからね」

柴田さん 「そんな風には見えないけど(笑)。移住する気マンマンに見えるよ」

安田さん 「ほら、子供がもう5歳で、現地の言語がわからないのもあるし、扶養動物もいるしね」

 

アラスカに限らず魅力的な場所があれば、すぐに行動に起こしてしまいそうな雰囲気があります。
いなべという場所にはこだわりがない、といいながら、目の前の過ごし方やコミュニティでの関係性は大切にされています。

 

安田さん 「いま僕のまわりでつながっている人たちは、みんな組織に属していない自営業とか一次産業ばかりで、その人たちの子供が育って来ている感じなんですよ。
自分の息子はいなべ生まれなんだけど、我が家の暮らしがマイノリティだということを理解していなかったようで、小学校に入って周りから『羨ましい』とか『楽しそう』って言われるようになって、得意気ですね。
好きなことを生業としている大人に囲まれて育った子供達がどうなるのかなぁってのは楽しみで、興味があります」

柴田さん 「それは、サラリーマンになるでしょ。逆にね」

安田さん 「なるかな〜(笑)  自分としては、これからは移住者というよりは、地域のネイティブ(いなべで生まれ育ってきた人)と繋がっていきたいかも」

 

今回の展示企画でも紹介させていただく「ゆうき農園」さんとは10年近いお付き合いだそう。
おふたりの出会いをきいてみました。

 

安田さん 「キャンプ場で働いてる時に大豆レボリューション(大豆をみんなで植える取り組み)ってイベントがあって、その時に就農したばかりの友喜君がフライヤー持って来たのがきっかけでした。
その頃の僕は、『いなべ市ってこんな広いのに、スーパー行っても有機野菜とか全然ないな、おもろないわ』って思ってたんですよ。そこに「ゆうき農園」っていういかにもって名前の人が現れて『あっ、面白い人いるじゃん』ってすごく嬉しくかったのを覚えてます。キャンプ場やめてからは色々関わって一緒にやるようになりましたね。

田舎でオーガニックな野菜やるってなると草ボウボウになるとかで嫌がられることが多いんですけど、彼はいなべで生まれ育ったネイティブで、人徳もあって、ゆうき君が言うんだったらいいよ、ってなる。
それに、オーガニック始めた他の農家さんがやりやすいように手を貸してますね。自分の商売と競合するかもっていう考えは全然ない。すごくウェルカムで、心に余裕がありますね。いなべのキーマンですよ、彼は」

 

 

今後の予定としては、奥さまの妹さんが越して来て一緒に住み、倉庫を改装してパン屋にされるとのこと。
そして自宅の2階も改装して宿とワークショップスペースにする計画も。
泊まりで自然の暮らしを体験したいという人を受け入れる為だそうです。

 

安田さん 「年内にはジビエ肉の解体処理場もオープンする予定です。自分が狩猟するものだけですから、年30-40頭くらいの処理量なんですけど、これで肉の販売もできるようになります。友達のショップとかでも置いてもらえるようにしていこうかなと」

 

–––こんなにたくさんのコンテンツを生み出しててるのに、いなべ自体にはあまり執着はないのが不思議ですね。

 

安田さん 「そうですねぇ。それは自分の悪いところだなと思ったり(笑) やりたいと思ったらすぐにやっちゃうので」

柴田さん 「ずっとここにいなきゃいけないっていう、しがらみがない分、色々挑戦していけるって感じなのかな。でもいつか出ていこうって思っていたら、普通はヤギ飼ったりカフェ開いたりしないでしょ?」

安田さん 「実はカフェをやろうという頃に軽井沢の方からキャンプ場のマネージャーとして来ないか、という話があって、どうしようか迷いはありました。あの時、軽井沢にいっていたらどんな生活だったのかなぁ。まぁ、カフェを始めたのは勢いだったんですよ」

 

一見、近年よく聞く「地域おこし」の例に取り上げられそうですが、ちょっと違う立ち位置の安田さん。
積み重ねてきた自然の中で生きるスキルをベースに、やりたい暮らしをひとつずつ形にしていきます。
その暮らしのスタイルを伝える力が、結果的に地域を変えていくのかもしれません。

安田さんの自然学校で、小学生たちが彼の話に心躍らせる。
そんな光景を見てみたくなりました。

 

 

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